アメリカ人はいつ休む?働き方と休暇の徹底検証!

アメリカ人の休暇

Cimplex Marketing Group Inc.はロサンゼルスに拠点を置き、グローバル事業を展開する日本企業を市場調査とマーケティングの分野で支援する日系の会社です。 

(2021年6月17日追記) 連邦政府は新たに6月19日を奴隷解放を記念するJuneteenthの祝日と定めました。直ちに施行され、これによってアメリカの祝日は年11日となりました。投稿の一部を更新しています。

当社ブログにて毎年、アメリカの祝日と当社の休業日に関する案内を投稿しています。実はこれらがオーガニックアクセスで常に上位、イースターやサンクスギビングの前はトラフィックが急増します。

海外と関わる機会が広がり、現地のカレンダーを調べる人が増えているでしょう。また、当社の日本の取引先もアメリカの連休や休暇についてよく質問してきます。つまり「アメリカ人はいつ休むのか?」を知りたい人が多いのです。そこで今回は、アメリカ人がいつ働いて、いつ休んでいるかを一挙に整理してみようと思います。

アメリカ人はいつ休む?「いつでも!」

結論から先に述べると、アメリカ人がまとまった休みを取る時期は決まっていません。ゴールデンウィークのような大型連休がありませんし、平日だけど会社が休業するお盆や年末年始のような期間もありません。

連邦政府が定める祝日は年10日 11日で、多くの民間企業はこれを基本に休業します。中小企業が祝日前後も休みにする例はありますが、会社規模が大きくなるほど独自の休業日は設けず、「カレンダー通り」が定着しています。

つまりアメリカ人は、祝日+有給休暇によって休みを取っているわけです。時期は個人に任されているので、取りたい時に取る形です。とはいえ、多くの人が前後に有給をくっつけて連休にするのが、以下の祝日です。

  • 7月4日  独立記念日
  • 11月最終木曜日  サンクスギビング(感謝祭)
  • 12月25日  クリスマス

この根底には「休みを決めるのは個人であって、国や会社ではない」という考えが強く根づいています。多文化のアメリカでは祝祭なども宗教で異なるので、自分の生活に合わせた休みの取り方が必要なのです。そのため連邦政府が定める祝日は最小限、あとは自分で決めなさい、というスタンスになっています。

実は働き過ぎのアメリカ人!4人に1人がブラック勤務?

アメリカの担当者が休暇中で業務が進まない、という経験をする日本の人が多いようで、「アメリカ人はよく休みますね」という感想を聞くことがあります。ですが、上記のように休むタイミングが皆一斉ではなく、夏でも年末でもない時期に長期で不在の人がいるから、「よく休む」という印象を持たれるのかもしれません。実際、アメリカ人は働き過ぎにおいて日本人といい勝負です。下のグラフを見て下さい。

Infographic: Vacation: Americans Get A Raw Deal | Statista You will find more infographics at Statista

このグラフで、濃い緑は各国が定める最低限の有給休暇日数、薄い緑は祝日の日数を示しています。ヨーロッパでは20日以上の有給休暇を定めている国が多く、日本も10日となっていますが、アメリカは濃い緑がゼロ。つまり法律が義務付ける従業員の有給休暇はなく、あくまで雇用契約次第となっています。さらに驚くべきことに、有給休暇をもらえる企業勤務者は全体の76%という別の統計があります(*1)・・・つまり24%は有給なしの「ブラック企業」で働いているのです!

最小限の条件で日本とアメリカを比べてみましょう。

日本アメリカ
祝日16日
2019年は特例で17日
10日 11日
休業日6日
お盆3日+年末年始3日
なし
会社によって2-3日
例:感謝祭翌日のブラックフライデー
有給休暇10日
勤続1年の付与日数
労働基準法で制定
10日
勤続1年の統計平均
法的拘束なし
合計32日20日 21日

なんと日本のほうがアメリカより12日 11日も多く休みがあります!もちろん個々の企業や勤続年数でかなり変わってきますが、アメリカはベースとなる休みが本当に少ないことが分かります。

サービス業の定休日

小売店や飲食店、サロンなどのサービス業も休みは少なく、年がら年中、朝から晩まで開いています。個人商店は定休日を設けますが、規模が大きなビジネスはほぼ無休、休業するのはサンクスギビング、クリスマス、最近はイースターくらいです(関連記事)。営業時間も長く、大型スーパーは朝6時から深夜0時まで、デパートは10時から21時まで、大型チェーンは8時ごろから21時までが一般的です。

もちろん、これらサービス業はシフト制で従業員が勤務しているわけですが、アメリカはどんな日、どんな時間に営業しても必ず働く人がいる国です。人が休んでいる時に働けば1.5~2倍の時給がもらえる、特別な日(例えば大晦日の夜など)は3倍や5倍に跳ね上がる。そういう仕組みの中で「稼ぎたい」と思う貪欲な人が必ずいるのです。国がそういう働き方を禁じている欧州とは大きく異なります。

始業が早く、終業も早い

日本人に負けず劣らず、おそらく世界屈指のモーレツワーカーなアメリカ人。土日祝日もメールでやり取り、クリスマスに出張、有給休暇の未消化率が高かったりと、とにかくよく稼働します。この背景には、休んでしまうと不利になる、遅れが気になるといった、熾烈な競争社会が引き起こす強迫観念も大きく要因していると思います。

ただ日本と違うのは、早い時間に終業する点です。オフィスワーカーなら4時や5時といった定時で帰ります。忙しくても家族との時間は確保する習慣が強いためです。もちろん、IT系は激務だし、エンジニアやクリエイティブ職は納期に合わせて徹夜もある、業績に基づいた年棒制の管理職も長時間働きますが、少なくとも「遅くまで仕事するのが当たり前」という考えはありません。

終わりが早いですが始業も早いです。オフィスワーカーでも朝7時出勤など珍しくなく(特に西海岸)、9時頃の出社はどちらかというと遅めです。最近は都市部の交通渋滞がひどいのでフレックス勤務を導入している企業も多く、始業がどんどん早くなる傾向があります。建築現場、芝刈り、ビルのメンテなどは朝7時が暗黙のルールで、一斉に作業が始まります。そういった業者を相手にする商売、例えば建築資材の卸売りや重機レンタルなどは朝4時頃に開きます。

学校の休み

学校はいつ休んでいるのでしょうか。これもビジネスと密接にかかわっています。なぜなら子供を持つ親は、学校の休みに合わせて休暇を取りたいからです。

公立校の最低授業日数は州ごとに決まっていて180日前後が平均です(*2)。1年の半分ですね。日本の義務教育は200日が目安ですから、20日も休みが多いことになります。春、夏、秋、冬の休みは各学校区(主に市単位)に任されていて、時期が結構ばらつきます。隣同士の学校区でも、一方は3月下旬、他方は4月中旬に春休みを取ったりするので、日本人からすると「わけが分からない」となります。

大学や大学院に至ってはもっと複雑です。学校によってセメスター(2学期)、トライメスター(3学期)、クオーター(4学期)制に分かれ、最近はさらにターム(期間)制というのも増えてきて、休みにまったく一貫性がありません。大学に勤める教職員も、これらのスケジュールに合わせて動くことになります。

セメスター制は1学期4ヵ月x2が基本ですが、夏と冬の休み中にも短期集中クラスがあり、全員必須ではなく希望者だけ受講できます。多くの学校で1時限は朝7時台から、夜は10時頃まであります(昼間、夜間の学部区別なし)。総じてアメリカの大学も、生徒が授業を受けやすいように、年がら年中、朝から晩まで開いているのです。

アメリカの祝日のまとめ

最後にアメリカの祝日について補足します。連邦政府が定める祝日は以下のように年10日 11日あります。ですが、企業は必ずしもすべてを休業にしているわけではありません。カッコ内にある数字は、その日を休業とする民間企業の割合です(*3)。

月日祝日休業の割合
1月1日元旦 New Year’s Day(90%)
1月第3月曜マーチン・ルーサー・キングの日
Martin Luther King Day
(39%)
2月第3月曜大統領の日 Presidents’ Day(34%)
5月最終月曜メモリアルデイ Memorial Day(93%)
6月19日Juneteenth
2021年に制定された新しい祝日
不明
7月4日独立記念日 Independence Day(93%)
9月第一月曜レーバーデイ Labor Day(94%)
10月第二月曜コロンバスデイ Columbus Day(14%)
11月11日退役軍人の日 Veteran’s Day(19%)
11月最終木曜感謝祭 Thanksgiving Day(97%)
12月25日クリスマス Christmas(95%)

前述した日米の比較では便宜的に祝日による休業を10日 11日としましたが、青で色付けした上記の4祝日は営業する企業も多く、実態は10日 11日以下なのです。

中でも微妙なのが、公民権運動家のキング牧師の誕生日を祝う1月の祝日です。1983年の制定と比較的新しく、その際に大きな議論がありました。もともと選挙権があった白人の保守層は「祝う必要なし」という考えでしたが、国民の多様化と共に、歴史における公民権の重要性に注目が集まり、キング牧師を称えないのは「差別主義者だ」という見方にシフトしはじめたのです。そのため風評を恐れる大企業は次々とこの日を休業にするようになりました。

他方で10月のコロンバスデイは最近かなり評判が悪いのです。言わずと知れたクリストファー・コロンバスを祝う日なわけですが、近ごろはアメリカ大陸を西洋に紹介した功績よりも、「虐殺者だった」「人身売買が十八番」という史実に注目が集まり、そんな人物を祝うのはおかしい、という考えになってきています。するとこの日に営業する企業が続出しはじめました。つまり政府の定める祝日さえも、時代によって休むか休まないかが変わってくるのです。

このような背景や文化があるため、アメリカ人が休暇を取る時期はバラバラという最初に述べた結論につながります。もしあなたが現地の担当者とやり取りしていたら、その人が個人的にいつ休みを取るのか、確認するしかないですね。折しもこの原稿を書いている今、日本は新天皇の即位に伴う10連休の真っ最中。逆にアメリカ人の感覚では、政府が「10日連続で休みなさい」というほうが驚きであることも加えておきます。

出典:

*1 Bureau of Labor Statistics – Private industry workers received average of 15 paid vacation days after 5 years of service in 2017
*2 National Center for Education Statistics – Number of instructional days and hours in the school year, by state: 2018
*3 Society for Human Resource Management – SHRM Survey Findings: 2017 Holiday Schedules

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Miyuki Sato

ロサンゼルスに拠点を置くマーケティング会社、Cimplex Marketing Group, Inc.の代表。専門は市場調査。在米20年以上、英語学習の本を4冊出版している。当ブログではビジネス英語に関する記事を多数投稿。